研究課題
1.廃棄物処理システムのリスク管理枠組みのデザイン
一般廃棄物、および災害廃棄物の処理システムでは、廃棄物の発生や滞留、または廃棄物中に含まれる種々の汚染物質が原因となり、私たちの日常生活や健康がリスクに曝される。
また、廃棄物処理業では、他産業に比較し事故が多いという側面もある。本研究では、廃棄物焼却等の中間処理を対象に、汚染物質による健康影響や事故のリスクを定量評価するとともに、既存設備の有効活用により長寿命化を図るストック・マネジメント手法も活用して、さらに安全・安心なシステムをデザインする。
2.循環型社会、低炭素化社会における都市代謝システムのデザイン
都市代謝システムの目的は、無害化、安定化に加え、省資源、省エネルギーが重要となっている。そのため、都市代謝システムの設計では、都市の環境保全と持続可能性を同時に満たす技術やプロセスを選定し組み合わせる必要がある。
本研究では、①温暖化防止の観点から、国内の都市ごみ焼却施設における、廃棄物のサーマルリサイクルを評価する。②近年、環境問題が顕在化するアジア・メガシティとして中国深圳市を対象に、有機性廃棄物の複合メタン発酵、ごみ焼却、下水処理を組み合わせた都市代謝システムを構築する。
まずは現状把握を行い、システム内の物質収支および熱収支を明らかにする。次に、様々なオプションの組み合わせを検討してライフサイクル評価を行い、これを通じ、技術的、経済的条件、ならびに地域や社会的条件に応じた適正な循環型・低炭素化システムを検討する。
3.液化ジメチルエーテルを用いた下水汚泥、汚染底質の常温での乾燥・浄化
下水汚泥は、排水を下水処理場で処理する際に発生する。また底質は、河川や湖沼の底に蓄積し、PCB、DXN類などの有害物質が濃縮されることがある。いずれも、人間の活動に伴い莫大な量が発生、蓄積され、より効率的に減容化・無害化されなければならない。
そこで、液化ジメチルエーテル(液化DME)を用いた溶媒抽出による、新しい下水汚泥の乾燥、汚染底質の浄化プロセスを提案する。この方法は、常温で対象物の乾燥、および浄化が可能となること、溶媒としての液化DMEが繰り返し利用できることが、最大の利点であり、本プロセスの構築を目指した研究を行う。
4.持続可能な廃棄物処理技術、資源循環技術の開発およびシステムの構築
廃棄物は様々な元素からなり、焼却や溶融などの中間処理を行った場合、残さ中へ重金属やレアメタルが濃縮される。これは都市型鉱山の出現ともいえ、焼却灰、飛灰などに濃縮した金属類を回収し、再資源化するとともに、回収後残渣も徹底的に有効利用することが、環境保全、省資源・省エネルギー面から望まれる。
本研究は、循環型かつ持続可能な廃棄物・資源循環技術の開発を行うとともに既存技術と新技術の評価を行い、それらを最適配置させたトータルコストやライフサイクルを考慮した真の循環システムの構築を目指した研究を行う。
5. 有機性廃棄物由来のバイオガス中に含まれる微量有害物質の実態調査と対策
温暖化対策として、カーボンニュートラルな有機性廃棄物由来バイオガスのエネルギー利用が、アジア圏を中心として活発化している。具体的には、主に下水汚泥バイオガス(消化ガス)、都市ごみ直接埋立地ガス(LFG)を用い、発電や燃料利用が進められてきている。しかしこれらのガス中にはシロキサン、VOC、水銀等、発電施設や周辺環境、人体に悪影響をおよぼす微量有害物質が含まれているとされる。
本研究では、これらの微量有害物質について調査を行うとともに、その対策方法について検討する。
6.高度汚泥処理システムの開発および最適化
下水が高度処理されるにしたがい、その負荷は水処理から汚泥処理へと転換してきており、以前にもまして汚泥処理の重要性が指摘されている。そのため汚泥処理も高度化せねばならず、さらに環境への負荷を最小限にした循環型社会を構築するためには、下水汚泥を徹底的に有効利用することが重要となる。
これらから、汚泥処理の単位操作について、有効利用の観点から見直すとともに、リンや有機物の資源循環型、省エネルギー型の新汚泥処理システムの開発、および最適化を行う。
7.重金属、特に水銀の排出挙動調査と長期安全管理方法の検討
重金属は、一度地圏から採掘され、精製・使用された後、気圏、水圏、地圏へと分配していく。特に水銀のような極めて揮発性の高い有害金属は地球規模での循環を繰り返し、気圏、水圏への滞留、食物連鎖を経て大型魚に濃縮される。このグローバルな水銀汚染は国際的には極めて重要な問題として取り上げられ、国連環境計画(UNEP)を中心に様々な対策が検討され、実施されつつある。
本研究では、日本における水銀排出の実態について調査するとともに、水銀の長期安全管理の在り方について技術的側面から検討を行う。
8.固形廃棄物のキャラクタリゼーション
新しい技術の開発には、対象物質の徹底的なキャラクタリゼーション(特性把握)が必要である。例えば固形廃棄物中の重金属の化合形態が分かれば適正処理および資源リサイクリングを行う上で非常に有用である。また、化合物により(As3+、As5+)毒性が異なることから環境汚染防止の観点からも形態の把握は重要である。しかし、微量であるが故に一般的な形態手法では化学形態解析が困難であり、このことが新技術を確立する上で障害となっている。
本研究では世界最先端の大型放射光施設(SPring-8、Photon Factory)を利用し、極めて微量な物質の変化を調査し、新たな技術の確立を目指した研究を行う。
9.残留性有機汚染物質(POPs)の生成および分解機構の解明
当研究室では、従来からダイオキシン類などPOPsについて燃焼の安定による生成の制御や再合成の抑制、排ガス処理の高度化、分解除去、環境動態、分析方法の改良などを一貫して研究してきた。非意図的に生成するPOPsの制御には発生源対策が最も効果的かつ重要であり、その制御のための生成機構の詳細な解明が求められている。一方で、既に存在するPCBsのようなPOPsに対しては安全かつ高効率な分解技術が必要で、そのため分解機構の解明が求められている。
本研究では、様々な角度からの分析、解析をもとに、各環境媒体(飛灰など)におけるPOPsの生成および分解機構の解明を行う。